ダニ、香りが苦手。…ジャスミン、ビャクダンが大嫌い

2003/11/11 yomiuri

かゆみやアレルギーの原因になるダニは、ジャスミンの香りが苦手なことが、家庭用品メーカーなどの研究でわかった。「におい」を使った新たなダニ撃退法の開発につながりそうだ。 アロマセラピー(芳香療法)に使われる植物精油など、人間は不快に感じない身近なにおい物質約350種類をそれぞれ紙に染みこませ、上に置いたエサにダニ(体長約0.3ミリ)が寄ってくるか観察した。 その結果、ジャスミンの花のにおい物質「ジャスモン酸メチル」と、線香などに使われるビャクダンのにおい成分には90%以上のダニが寄りつかなかった。特にジャスモン酸メチルを染みこませた紙は4日後でも嫌がった。 研究チームは、ダニが好む枕カバーの成分も分析。ダニは「あか」そのものより皮脂成分が酸化してできる物質「ノナナール」のにおいに引き寄せられることも突き止めた。

喫煙者の死亡の危険性は2〜4倍 

2003/10/03 yomiuri

喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります」財務省は2日、たばこの箱や包装の注意文で、健康への危険性を具体的に明示することを求めるなど、新たなたばこ規制を2005年7月から実施する方針を固めた。 3日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会に諮り、11月にも必要な省令改正をする方針だ。 注意文規制は、5月にWHOで採択された「たばこ規制枠組み条約」の基準に合わせたもの。「健康を損なうおそれがある」などとしている現在の注意文を、心筋こうそく、脳卒中や肺気腫など具体的な病名をあげて死亡の危険性を指摘する文面に改めるよう義務付ける。 妊婦がたばこを吸えば「胎児の発育障害や早産の原因の一つ」になることや、周囲の人のたばこで被る「受動喫煙」の悪影響を指摘する表現なども含め、計8種類の注意文が順次表示されるように求める。

アルツハイマー予防にポリフェノール、赤ワイン効果確認 2003/09/29 asahi

 赤ワインに含まれるポリフェノールが、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質を分解することを山田正仁・金沢大教授(神経内科)らが実験で確認し、国際神経化学学会誌オンライン版で発表した。効果が示されたポリフェノールの量は赤ワイン約500cc分とかなり多め。アルコール分は、厚生労働省が掲げる1日の適量の倍以上になる。 フランスなどの疫学調査で、定期的に赤ワインを飲んでいる人はアルツハイマー病を含む痴呆症の危険性が減る可能性があるという報告が出されていた。 アルツハイマー病の患者の脳には、βアミロイドというたんぱく質が線維状になって沈着して老人斑と呼ばれるものができる。これが発病や病状の進行に影響するとみられている。 山田さんらは、赤ワインに多く含まれるミレセチンなどのポリフェノールをβアミロイドの溶液に加え、線維化現象への影響を調べた。 その結果、低濃度のミレセチンが線維化を抑えたほか、一度線維化した?アミロイドもミレセチンを加えると元のβアミロイドに分解された。また、線維化したβアミロイドは細胞への毒性があるが、ミレセチンを加えるとその毒性も減ることがわかった。 山田さんは「ポリフェノールをサプリメントにするなどしてアルツハイマー病の予防治療用に応用できる可能性がある」と話している

コーヒーに胆石予防効果か 産業医大グループ発表 2003/09/24 asahi

 コーヒーを飲むと胆石症になりにくい。とくに男性でこの傾向が顕著――という疫学調査の結果を、産業医科大の産業生態科学研究所グループが24日、東京での講演会で発表した。 同グループの徳井教孝講師(栄養疫学)によると、コーヒー摂取量と胆石の発症率との関係を調べるため、福岡県内で男女約7600人(30〜79歳)を対象に87〜93年の間、追跡調査をした。 この間に胆石を発症した人は男女合わせて128人。男性では、コーヒーを全く飲まない人の発症率に比べ、コーヒーを時々飲む人はその5割、1日に1杯以上飲む人では4割だった。女性でははっきりした差がみられなかった。 徳井講師は「コーヒーに含まれるカフェインや繊維などが作用している可能性がある」と話す。コーヒーの胆石症予防効果は動物実験では指摘されていた


マイナスイオンの抗酸化作用、人で実証…富山医薬大ら

2003/09/24 yomiuri

リフレッシュ効果があるとされるマイナスイオンが満ちた部屋で生活すると、人体に有害な「活性酸素」を減らす「抗酸化物質」の一種が増えることが、富山医科薬科大の田沢賢次教授と香川県坂出市にある民間病院理事長の堀口昇医師らによる共同研究で明らかになった。 多量の活性酸素は体内の細胞のたんぱく質などを傷つけ、がんを引き起こすことが指摘されており、マイナスイオンにがんの予防効果が期待できるという。田沢教授らは、25日から名古屋市で開かれる日本癌学会総会で研究結果を報告する。 研究は、マイナスイオン発生装置を設置した部屋と、していない部屋に、激しい運動をして活性酸素が発生しやすい運動選手11人を5人と6人ずつに分け、6日間、夜間に睡眠を取ってもらい、血液と尿を調べた。マイナスイオン濃度は、装置から3メートル離れた場所で1立方センチ・メートルあたり通常の約27倍の2万7000個に設定。  その結果、マイナスイオンを発生させた部屋の選手の方が、活性酸素を無害化する働きを持つ体内の抗酸化物質の一種「ユビキノール」の量が約5倍も増えていた。また、活性酸素で傷つけられた細胞核や細胞膜を再生させる物質の量も3分の1程度だったことから、マイナスイオンが活性酸素を無害化し、傷つく細胞核などが減少したと推定されるという。

みそ汁3杯で乳がん抑制 閉経後の発生率4割減2003/09/10 asahi

みそ汁を1日に3杯以上飲むと、閉経後の乳がんにかかる率が下がる――。厚生労働省の研究班は9日、乳がんと大豆食品との関係をみた、こんな追跡調査の結果を発表した。岩手、秋田、長野、沖縄の4県14市町村に住む40〜50歳の女性2万1852人を対象に、みそ汁や豆腐、納豆など大豆製品の摂取量と乳がん発生率の関係を90年から追跡し、疫学的に調べた。その結果、みそ汁を1日に1杯飲むか飲まないかのグループが閉経後に乳がんにかかる率を100とすると、3杯以上の場合の発生率は4割少なかった。また、大豆に含まれるイソフラボンの摂取量が多いほど、乳がんの発生率は低くなり、摂取量が最大のグループは、最小の半分以下だった。ただ、豆腐や油揚げ、納豆などの他の大豆加工食品では、摂取量が極端に違わないためか、乳がんとのはっきりした関連はみられなかった。乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンが関係するとされ、大豆に含まれるイソフラボンは、このエストロゲンが体内で作用するのをブロックする働きがある。主任研究者の津金部長は、「みそ汁やイソフラボンの乳がん予防効果が裏付けられた。ただ、みそ汁の飲み過ぎは塩分の取りすぎにもなり、逆に高血圧や胃がんなどを引き起こしかねない。バランス良い食生活を忘れないでほしい」と話している。

緑内障、20人弱に1人発病 40歳以上を調査

2003/09/05 asahi

「目の成人病」ともいわれ、視野が狭くなり、視力の低下や失明の危険もある緑内障で、これまで40歳以上の30人に1人とされてきた有病率が、20人弱に1人に達することが、日本緑内障学会の疫学調査で分かった。5日から東京都内で始まる同学会で詳細が発表される。 同学会の疫学調査委員会などが00年9月から1年半かけ、岐阜県多治見市で40歳以上の男女4000人を対象に実施した。参加率は75%。大規模な疫学調査は88年〜89年にかけ全国7カ所で実施されて以来になる。 それによると、緑内障だった人は5.78%で、ほぼ17人に1人いた。有病率は前回調査(3.56%、28人に1人)に比べて2ポイント余り高い。診断技術の進歩などで早期発見が可能になったことなどが背景にある。 タイプ別では、眼圧が正常なまま症状が進行するタイプ(正常眼圧緑内障)が3.60%と最も多く発病者の6割を占めた。眼球内の体液が排出されず眼圧が上昇するタイプでは、体液が流れにくくなる開放隅角(ぐうかく)型が0.32%、体液の流路がふさがる閉塞(へいそく)型などが1.86%だった。 正常眼圧型の有病率は、海外での疫学調査(0.3〜1.54%)に比べても高い。正常眼圧型と開放型の合計も、緑内障が最も多いとされてきたアフリカなどの黒人(40歳以上)の有病率(3.1〜6.6%)に並ぶ高さだった。 緑内障の多くは、自覚症状がない一方で、早期に発見すれば病気の進行を食い止めることができる。分析メンバーの1人、帝京大学医学部付属市原病院の鈴木康之教授は「とくに正常眼圧型は、眼圧検査だけではわかりにくい。有病率が高いことを知ってもらうことで、早期発見のための受診率アップにつながれば」と話している

SARS、今秋に再び流行の恐れ 米情報会議が報告書 2003/09/03 asahi

秋の深まりとともに再び新型肺炎SARSが流行する恐れがある。米国家情報会議が先月,そんな報告書をまとめ、米中央情報局のテネット長官に提出されていたことが分かった。各国の衛生当局の対応が遅れると感染者が増え、インフルエンザの季節には深刻な事態になりかねないという。 報告書は「秋になって温暖地域の気温が下がれば再び流行がぶり返す恐れがあると、多くの専門家が危惧している」と述べた。インフルエンザの流行と重なった場合は「SARSの疑いのある患者を見分け、隔離するのは非常に難しくなる」と指摘。流行が冬場にずれ込めば、さらに危険性が増すことを警戒している。 衛生当局の対応によって、地域的に限られた流行で抑えられる。○アジアやアフリカの発展途上国で限定的に広がる。○前回と同じように中国やカナダなど多くの国に広がる、というシナリオが考えられるという。3番目のシナリオの場合、「日米欧など近隣の地域も大きな被害があり得る」と警告した。

阪大グループが白内障の原因解明 新薬に道

2003/08/28 sankei

目の水晶体が濁って視力が低下する白内障は、水晶体のDNAを分解する酵素の遺伝子欠損が原因で起きることを、長田重一大阪大教授らがマウスの実験で突き止めた。白内障のメカニズムを解明したのは初めてで、点眼薬など新たな治療法の開発につながる可能性があるという。28日付の英科学誌「ネイチャー」で発表した。白内障の国内患者は約145万人(平成11年)。加齢に伴う老人性と遺伝性のタイプがあるが、発症の仕組みは不明だった。 水晶体はレンズの役割を持つ透明な器官。人間の細胞の大半は核の中にDNAが存在するが、水晶体の細胞は成熟過程で核が消失し、DNAも分解される特徴がある。 この現象に着目した長田教授らは、まず水晶体のDNAを分解する酵素を特定。次に、その遺伝子を取り除いたマウスを作り、DNAの分解を阻害する実験を行った。その結果、水晶体は白濁し、視力は半分以下に低下。分解されずに残ったDNAが水晶体の細胞内に散らばり、光が通りにくくなって白内障を起こすことが分かった。 長田教授は「DNA分解酵素を点眼薬として利用できる可能性が高い。今後は遺伝性だけでなく老人性白内障の仕組みも解明したい」と話している。

「老化抑える物質発見」米研究チーム 酵母では確認

2003/08/26 asahi

老化を抑える画期的な物質を見つけたと、米ハーバード大などの研究チームが英科学誌ネイチャーの最新号に発表した。「寿命を延ばす薬につながる可能性がある」と米メディアが詳しく報じた。ただし、実験で寿命延長を確認したのは酵母。本物かどうかは、今後の研究結果を待つ必要がありそうだ。カロリー制限で寿命が延びることは動物実験で知られている。研究チームは、このときと同じ反応を生体内で起こす物質を赤ワインの成分中に見つけた。ポリフェノールの一種で、酵母を使った実験では通常より70%も寿命が延びた。ショウジョウバエでも効果が見られ、年内にネズミの実験を始める。
25日付ニューヨーク・タイムズ紙は「人間でも30〜50%は寿命が延ばせるかもしれない」という研究チームの見解を紹介。同日付ワシントン・ポスト紙も長寿薬につながる可能性を指摘した。ただ、両紙とも「老化の仕組みは複雑で、そう簡単に寿命は延ばせない」という専門家の慎重論も付け加えた。

慢性疲労症候群、患者から特殊たんぱく 2003/08/04 asahi

強い疲労感や筋肉痛、微熱などが長期間続く原因不明の病気、慢性疲労症候群の患者の半数で、特殊なたんぱく質が血液中に出ていることが、関西福祉科学大と大阪大の共同研究で分かった。このたんぱく質は脳や心臓などで神経の情報伝達を妨げる働きをする。病態の解明と治療法開発への手がかりになるという。国際医学専門誌の8月号に報告した。
関西福祉科学大の倉恒弘彦教授(内科学)らは患者60人と健康な人30人の血液を採り、神経の情報伝達に関係する4種類のたんぱく質を調べた。すると、CHRM1抗体という特殊なたんぱく質が、患者の53%にあたる32人から見つかった。健康な人からは見つからなかった。 患者のうち、このたんぱく質があった人は「筋肉の脱力感」の程度が、なかった患者より1.5倍強く、「ぼーっとする」という訴えも1.2倍強かった。また、たんぱく質の量が多いほど、症状の程度も重かった。 大脳や神経、心臓などには、意欲や思考力に関係するアセチルコリンという情報伝達物質を受け取る「受け皿」役のたんぱく質がたくさんある。研究チームは、CHRM1抗体がこの「受け皿」に強く結びつき、アセチルコリンの働きを阻害していると見ている。 <渡辺恭良大阪市立大教授の話> アセチルコリンの作用を阻害するたんぱく質と慢性疲労症候群との関係が明らかになったことは、病態解明と治療法開発への大きな手がかりになる。

喫煙は死を招く最大要因、厚労省19年調査で裏付け

2003/07/31 yomiuri

 高血圧や肥満など、種々の病気の要因のうち、死亡率を高める最大の原因は「喫煙」であることが、厚生労働省研究班の19年間にわたる大規模調査で裏付けられた。 1日1箱の喫煙は、「最高血圧が平均より40以上高い人」や、「血糖値が平均より100以上高い人」より死亡リスクが高いという結果になった。 研究班は1980年から19年間にわたり、30歳以上の健康な男女約1万人を追跡調査。血圧やコレステロール値、血糖値、肥満度、喫煙習慣、飲酒習慣など、病気につながるさまざまな要因について、それぞれ死亡率にどれだけ関係しているかを調べた。 その結果、最高血圧、血糖値は平均から「1」上がるごとに、死亡率もそれぞれ0.5〜0.8%、0.3%上昇。高コレステロールや肥満度は、動脈硬化などの死亡率を押し上げる原因にはなっていたが、全体の死亡率にはほとんど影響していなかった。 また、男性がたばこを1日1箱吸うと、吸わない人に比べ死亡率は34.6%上昇。毎日続けて飲酒すると、男性の死亡率は1.7%、女性は4.1%上がっていた。

きついネクタイご用心、緑内障誘発の恐れ・・・米論文2003/07/30yomiuri

 ネクタイをきつく締めると緑内障の原因である眼圧上昇を引き起こす危険があると、ニューヨーク州立大医学部の研究者らがこのほど英眼科学会誌に発表した。
調査は緑内障の患者と、眼圧が正常の男性それぞれ20人を対象に実施。きついと感じる程度にネクタイを締めた後に計測したところ、患者の12人と正常男性の14人の眼圧が上昇していた。
研究者らは、きついネクタイは頸動脈を締め付け、静脈の血圧を上げ、眼圧上昇につながるのではないかと分析。常にネクタイをする職業や、首が太い男性にとって、ネクタイは“要注意”と指摘している。一方、正常であってもネクタイのために眼圧が高いと誤診される可能性もあるという

インターフェロンのがん作用の仕組み解明 東大教授ら

asahi 2003/07/18

C型肝炎の治療などに使われる抗ウイルス薬インターフェロンががん細胞の増殖を抑える仕組みを、東京大学の高岡晃教講師と谷口維紹教授(分子免疫学)らの研究グループが解明した。ほかの抗がん剤との併用でがん細胞が死滅することもわかり、新たながん治療への応用も期待される。 インターフェロンはウイルスによって引き起こされる病気の治療薬だが、慢性骨髄性白血病や肝臓がんなどにも効果があることが経験的に知られている。しかし、なぜ抗がん作用があるのかはわかっていなかった。 研究グループは、マウスの細胞を用い、インターフェロンがISGF3という転写因子を介して、がん抑制遺伝子p53の働きを高めていることを突き止めた。がん抑制のp53たんぱくが3〜4倍多くなり、がん細胞が自然死する「アポトーシス」という現象をより多く引き起こしていた。 また、ヒトの肝臓がん細胞に、インターフェロンとごく少量の抗がん剤5−FU(一般名フルオロウラシル)を使うと、がん細胞が死滅することを確かめた。 谷口教授は「インターフェロンを使うことで、少量の抗がん剤でも治療効果があることが示唆された。併用療法で抗がん剤の副作用を減らすことができるかもしれない」と話している。

ゲームなど、子供の脳にどう影響?文科省調査へ asahi 2003/07/11

乳幼児期に体験したテレビ、ビデオ、ゲームが、その後の子供の脳にどのような影響を与えるか?。文部科学省は来年度から同年代の子供約千人を10年間にわたって追跡する大規模な調査を行う。医学、心理学、教育学などの研究者が専門分野の垣根を超えて共同研究できる態勢を目指す。 同省の検討会がまとめた報告書で、環境要因が脳機能に与える影響などを重点的に研究するよう求めたことを受けたもの。
1)乳児期にテレビやビデオをどのくらい見ているのかを、親の意識調査も含めて実態を調べる。
2)長期間テレビゲームなどの刺激を受けることで脳機能にどんな影響があるかを解明する、などがあがっている。
これとは別に、社会生活や学校生活での過剰なストレスの影響を調べることで、虐待やいじめ、ひきこもり、不登校など、心の問題に対する対応策も研究の対象とする。

リウマチ原因遺伝子を特定 理化学研・東大などのチーム

2003/06/30 asahi

全身の関節が痛む関節リウマチの原因遺伝子の一つを、理化学研究所と東京大学などの研究チームが特定した。この遺伝子の特徴の違いが病気のかかりやすさを左右しているとみられる。関節リウマチの患者822人と健常者646人について、遺伝子レベルの微妙な個人差を一人当たり約10万カ所で比較した。 その結果、たんぱく質成分のアミノ酸アルギニンをシトルリンに変える酵素を作る遺伝子が、症状に強く関係していることがわかった。シトルリンを含むたんぱく質が体内で増え過ぎると、抗体が作られて免疫異常を引き起こすらしい。 研究チームによると、この遺伝子はリウマチの症状が出やすいタイプと出にくいタイプの二つに分類可能で、出やすいタイプの遺伝子を持つ人の割合は、健常者25%に対し、患者は32%だった。チームでは、日本人の患者の17%がこの遺伝子が原因で発症していると推計している。 関節リウマチの患者は日本に80万人以上。発病の詳しい原因はわかっておらず、根本的な治療法もまだ見つかっていない。これまでの研究で、免疫に関するHLA遺伝子が発病に関係することが知られていた。 理研遺伝子多型研究センターの山田亮研究員は「遺伝子の働きをさらに詳しく調べて、新薬の開発や発病の仕組みの解明につなげたい」と話している

痴ほう,パーキンソン病予防にカルシウムと運動。2003/06/24 yomiuri

 海藻や牛乳などカルシウムが豊富な食事や日々の運動が、パーキンソン病や痴ほう症の治療や予防に役立つことを筑波大の須藤伝悦博士らが動物実験で初めて明らかにした。生活習慣の大切さが改めて注目されそうだ。 手足のふるえや筋肉硬直などが特徴のパーキンソン病や、痴ほう症のうちでパーキンソン病に似たDLB型、高血圧症、てんかん症などは、脳内の情報伝達に使われる物質の一種ドーパミンが減ってしまうことがその一因になっている。
須藤博士らはネズミを使った実験で、餌として摂取したカルシウムが、脳内のドーパミン合成を実際に促進する仕組みを突き止めた。また、毎日の運動で、体内のカルシウム代謝が活発化し、骨の中のカルシウムが血流を通じて脳に供給され、ドーパミンが増えることも分かった。
海外では近年、山歩きや散歩、ストレッチなどの運動を1か月程度続けると、パーキンソン病や痴ほう症が改善したとする報告が増えている。また約4300人を追跡調査した海外の研究では、運動習慣がある人は、ない人に比べて痴ほう症になる割合が半分程度だった。

アルツハイマー新ワクチン開発 マウスから老人斑消える 2003/06/17 asahi

老人の痴呆の原因になるアルツハイマー病を治療する新しいワクチンを、国立療養所中部病院長寿医療研究センターが開発した。日本では65歳以上の7%が痴呆の症状を示し、うち約半分はアルツハイマー病が原因といわれており、治療の切り札として期待される。アルツハイマー病は、脳にベータアミロイドという独特のたんぱく質がたまり、大脳皮質などに老人斑を形成する。 同センターの原英夫研究員らは、ベータアミロイドを作るDNAを、人体には無害のウイルスに組み込み、ワクチンに仕立てた。これを患者が飲むと、腸の細胞でベータアミロイドが作られる。ここで免疫反応が引き起こされて、体内でベータアミロイドを攻撃する抗体が作られるようになるため、脳でも集積できなくなる仕組みだ。 欧米で研究されているのは、ベータアミロイドを皮下注射するワクチン。注射する方法では、抗体を作る反応とは別に、副作用を起こすTリンパ球の反応を引き起こすのが難点だった。原さんらの飲む方法では、Tリンパ球が反応しないため、副作用が抑えられるという。 原さんらは、ベータアミロイドが脳にたまるように遺伝子操作したマウスを使って実験。ワクチンを与えたマウスは形成されるはずの老人斑が消えていた。迷路を使った実験で、ワクチンを与えたマウスの方が知能が良い傾向もわかった。 ワクチンの開発は、欧米で先行し、患者への臨床試験も始まっていたが、副作用とみられる脳炎が報告されたため、昨年中止されていた。 しかし、欧米で開発されたワクチンで抗体ができた患者は、老人斑が消えたり、痴呆の進行が遅くなったりすることが確かめられたため、副作用の少ないワクチンの開発が待ち望まれていた。 田平武・長寿医療研究センター長は「ワクチンがこの病気の治療のもっとも早道になるだろう。サルを使った実験の後、来年にも人での臨床試験に取り組みたい」と話している。

発毛を左右するたんぱく質特定  2003/06/17 asahi

 ヒトの髪の毛が生えるのを左右する特定のたんぱく質を、遺伝子の働きを調べることで割り出した、と家庭用品大手のライオンが16日発表した。徳島大学医学部皮膚科学教室(荒瀬誠治教授)との共同研究によるもの。ライオンではこの結果を応用して、新しい育毛剤の開発を目指す、という。 遺伝子発現解析と呼ばれる手法で解明した。 研究では、まず毛が徐々に細くなってM形におでこが広くなったり、頭のてっぺんから毛が抜けたりする男性型脱毛の、毛が抜けた部分と抜けていない部分の、根の部分の細胞を培養した。 そのうえで、それぞれの細胞の中にある遺伝子が作り出すたんぱく質を網羅的に比べたところ、脱毛部ではBMPと呼ばれる骨形成促進因子と、エフリンという血管新生誘導因子のたんぱく質が作られる量が著しく少ないことが認められた。 一方で、両因子が増毛につながる毛包細胞増殖を促していることも確認された。 これを踏まえて、発毛・育毛に効果があるといわれている物質を複数加えて調べたところ、そのうちの一つ、「6−ベンジルアミノプリン」という植物成長促進物質を加えたものでは、51種の遺伝子に変化が生じ、BMPとエフリンの両因子の作られる量が増えていることが認められた。 6−ベンジルアミノプリンは、脱毛促進因子としてすでに知られている「NT−4」と呼ばれる神経増殖因子の量を減らすことも確認できた。 ライオンなどでは、これらの結果からBMPとエフリンの量が発毛を左右していることと、6−ベンジルアミノプリンが発毛促進、脱毛抑制の双方から効果を発揮することが解明できた、としている。

抗がん剤の効き目、遺伝子異常で予測  2003/06/13 asahi

抗がん剤を使う前に効くかどうか予測する目安となる遺伝子異常を、札幌医科大の豊田実助手と同大付属がん研究所のグループが突き止めた。患者一人ひとりのがんの特徴を見分けて薬を選ぶオーダーメード治療につながる研究で、近く米科学アカデミー紀要に掲載される。 抗がん剤の効果は患者によって異なる。抗がん剤はふつう、正常細胞にも影響を及ぼし、下痢や骨髄の働きの低下などの副作用が出る。効かない患者には副作用だけが出ることになるので、事前に調べて抗がん剤を選択しようという研究が進んでいる。 グループは、大腸がんや口腔(こうくう)がんなどの患者160人のがん組織を対象に、ある抗がん剤が効いたがんと、効かなかったがんの違いを分析した。 その結果、効いたがん細胞では「Chfr」という、細胞分裂をチェックする遺伝子に異常が起きていた。
また、この異常のあるがん細胞に、抗がん剤が効くかどうか試したところ、がん細胞は死滅したという。
豊田さんは「異常に応じて抗がん剤を選択すれば効果的な治療が可能となる。異常を分析する方法も研究中で近く特許申請したい」と話す。

妊娠中にディーゼル排ガス、子ネズミ花粉症に 都が実験 2003/05/27 asahi

妊娠中のネズミにディーゼル車の排ガスを浴びせたら、子ネズミはスギ花粉症になりやすくなる。
東京都の委託を受けた調査委員会が27日、こんな調査結果を明らかにした。
花粉症とディーゼル排ガスの関連性はかねて疑われてきたが、「親子間」の影響に関するデータは初めてという。
都は排出基準に合わないディーゼル車の走行を10月から禁止するが、調査は排ガスの悪影響を検証するのが狙い。
研究では、妊娠したネズミを10匹程度の複数のグループに分け、排ガスが通常より100倍と10倍の濃度の空気を1日6時間、14日間浴びせた。生まれたネズミにスギ花粉を3回投与し、清浄な空気で育ったネズミへの投与例と比べると、花粉症の原因とされるIgE抗体と呼ばれるたんぱく質の量が平均で1.6〜1.5倍程度多かった。
試験管内でスギ花粉症の人の血液にディーゼル車の排出微粒子を投与する実験では、鼻水、鼻づまりを引き起こすヒスタミンが約1.4倍、アレルギー炎症を起こすインターロイキン(IL)5が約1.5倍発生した。

茶わん一杯で血糖値低下 遺伝子組み換え米で糖尿病予防 2003/05/13 asahi

茶わん1杯のご飯を食べていれば糖尿病の改善や予防につながる――。日本製紙などの研究グループは12日、こんな効果がある米を開発したと発表した。血糖値を下げるホルモン、インスリンの分泌を促す薬を遺伝子組み換え技術で米に蓄積させることに成功した。インスリン注射をしなくても済む治療法につながる可能性がある。早ければ3年後の商品化を目指している。
生活習慣が原因の2型糖尿病は、血糖を下げる役割があるインスリンの分泌が悪くなることから起こる。このため研究グループは、インスリン分泌を促すペプチド薬に注目。遺伝子組み換え技術を使い、米に多量に含ませることに成功した。
開発した米が消化されてどうなるかを試験管で調べた結果、実際にインスリンが分泌され、血糖値を下げる効果が表れることが分かった。 研究グループは「注射のようなリスクもなく、米を食べる普通の生活が治療になるため、患者にとってのメリットが大きい。安全性などを検証し、商品化につなげたい」としている。

脳卒中リハビリ、休日はさむと自宅復帰率低下 2003/03/17 asahi

脳卒中のリハビリ中に休日が多いと、退院時に自宅に復帰できる率が11ポイント低く、死亡率は3倍近い。こんな傾向が厚生労働省の研究班の調査でわかった。 脳卒中では発病後なるべく早く全身の関節を動かすなどのリハビリに取り組めば、後遺症の軽減や死亡率の低下につながるとされている。 調査対象は、国立循環器病センターや九州大付属病院、中国労災病院など国関係の10病院に発病後3日以内に入院した脳卒中患者938人。入院の翌日から21日間の状況と経過を分析した。 10病院でのリハビリ実施は平日だけ。21日間の平日の数を(1)9〜13日(225人)(2)14日(374人)(3)15日(339人)の3群に分けて比較した。 入院期間中に連休などで休日が多かった(1)の人は、(2)と(3)の人より理学療法のリハビリを受けた平均日数が約1日少ない9.2日。自宅への復帰率は(1)が51.6%で(3)より10.9ポイント低く、死亡率は5.8%で(3)の約2.7倍だった。 長谷川さんは「年間を通して医療レベルを低下させないよう、急性期のリハビリを含む脳卒中の医療体制を本格的に検討する必要がある」としている。

化学物質、放射性物質の発がん危険性、赤ちゃんは10倍 2003/03/05 yomiuri

子供たちは大人に比べて3〜10倍も化学物質に弱い――。米環境保護局(EPA)は初めて、大人と子供の違いを考慮した発がん危険性評価の指針案をつくった。3日から意見を募って、夏ごろ正式にまとめる。
指針案は、2歳未満の乳幼児と胎児の場合、化学物質や放射性物質で将来がんになる危険性が大人の10倍、2〜15歳の子供は少なくとも3倍だとしている。
成長の過程にある子供たちは、大人に比べ、化学物質や放射性物質によって遺伝子が突然変異を起こしやすい。動物実験の結果や、広島や長崎の被爆者の健康調査などのデータをもとに数字をはじき出した。

人の長寿遺伝子、見つけた」米研究チームが発表

2003/02/16 yomiuri

 人間の「長寿の遺伝子」を、米ハーバード大、バイオベンチャー企業センタジェネティクス社などの共同研究チームが発見した。千葉市で15日に開かれた老化の国際シンポジウムで報告した。
寿命を延ばす遺伝子は、小さな虫やネズミでは見つかっているが、人間では初めて。長寿を達成する薬の開発などにつながると期待される。
研究チームのアンニバーレイ・プーカ医師によると、百寿者(100歳以上の人)や100歳前後の兄弟姉妹がいる137組の家族に協力してもらい、308人のDNAを採取して、長寿者に共通する部分がないか調べた。コンピューターを用いた分析の結果、23対の染色体のうち4番染色体上に遺伝子があることを突き止めた。
研究チームはこの遺伝子をCGX―1と名づけ、詳細を数か月以内に明らかにするとしている。
鍋島陽一京都大教授は「百寿者でこうした遺伝子を見つけるのは困難とこれまで考えられていた。注目に値する研究だ」と話している。

インフルエンザ患者、さらに増加 昨年同期の4.8倍

2003/02/01 asahi

先月20日から26日までに全国約5000の医療機関から報告されたインフルエンザ患者が18万2138人だったことが、厚生労働省のまとめでわかった。1医療機関当たり38.52人で、増加傾向は続いており、前週の29.15人からさらに増えた。昨年同期の4.8倍で、大流行した98年の同期の37.87人を上回った。
全国の幼稚園、保育園、小中学校、高校から19日から25日までに報告された休校数は63(昨年同期16)、学年閉鎖は589(同84)、学級閉鎖は1842(同194)。患者数は8万9216人(同8791人)、うち欠席者は4万6690人(同4553人)だった。 厚労省によると、患者の増え方は、中規模の流行だった99年から00年のシーズンに似ているという。

インフルエンザウイルスの弱点発見、増殖の仕組み解明2003/01/28 yomiuri

国内で昨年末ごろからインフルエンザの流行が急速に広がっている中、ウイルスの弱点になるとみられる増殖の仕組みを、東大などのチームが明らかにした。近く米科学アカデミー紀要に発表するが、ウイルスの増殖を抑える新タイプの治療薬の開発につながる可能性が期待される。インフルエンザウイルスの構造は単純で、たんぱく質や脂質などでできた殻の中に8個の遺伝子が収められた粒子。だが、ウイルスが増える際に、8個の遺伝子がどのようにして殻の中に取り込まれ、完成品の粒子になるのかは謎だった。
東大医科学研究所の河岡義裕教授、広島大大学院の藤井豊助手らのチームは、遺伝子を様々に変化させたウイルスを次々と人工合成し、どんな影響が出るかを詳細に調べた。その結果、8個の遺伝子が効率良く1組にまとまる形で、殻の中に取り込まれることを発見。遺伝子が1組にまとまる際に必要な“信号”もほぼ特定できた。この信号の働きを妨害できれば、ウイルスの増殖を抑えることが可能になるという。

細胞死を抑えるたんぱく質、脳梗塞や肝不全の悪化防ぐ2003/01/07

 細胞死を抑えるたんぱく質を注射して、脳梗塞(こうそく)や肝不全の悪化を防ぐことに、日本医科大学老人病研究所(川崎市)の太田成男所長らのグループがネズミの実験で成功した。
たんぱく質の大きな分子を細胞内に入れるために、エイズウイルスが細胞内に侵入する方法を使ったのが特徴。新しい治療法の開発につながる可能性があるという。 同グループは、細胞の自然死(アポトーシス)を抑える遺伝子がつくるたんぱく質に着目。構造を一部変えて、細胞死の抑制効果を20倍以上に高めたたんぱく質のFNKを開発した。
 FNKは、分子が大きいため細胞の区切り(細胞膜)を通れない。そこで、エイズウイルスが細胞内に入る際、先導役を果たすたんぱく質断片(PTD)とFNKを結合させたところ、細胞膜を通過することができた。
 脳梗塞の実験では、FNKとPTDを結合させたたんぱく質をネズミの腹に注射した後、脳の血流を5分間止めた。すると、普通はほとんど死滅する脳細胞が平均3、4割、最大約8割生き残った。
 肝不全の実験では、もっと効き目が高かった。ネズミに麻酔をかけて肝臓の血流を90分間止めた後、再び血流を戻して3時間後に肝臓を摘出した。肝細胞を調べると、結合たんぱく質を注射したネズミでは、ほとんどの細胞が正常に生き残っていた。注射していないネズミの肝細胞はほとんどが死滅していた。
毒物をネズミに注射した実験やヒトの肝細胞やリンパ球などを対象にした実験でも、同様の効果があった。
 太田所長は「脳梗塞などの人が病院に着くまで脳細胞を延命させる効果が期待できる。移植用肝臓の鮮度を保って成功率を高める可能性もある。新しい『たんぱく質治療』を確立したい」と話している。
 研究内容は、米科学アカデミー紀要などで発表された。